青色申告の特典

青色申告は事前に承認申請書を税務署に提出のうえ、一定の帳簿を備え付け、日々の取引を継続的に記帳します。その記録にもとづいて、正しい所得金額や税額を計算し、確定申告をおこない、納税する制度です。正しい納税金額は納税者自身が一番よくわかっているというシャウプ勧告の民主的な理念にもとづいて制定されています。このため、納税者の自発的な納税協力を促し、記帳水準の向上につながるよう、青色申告特別控除(65万円・10万円)や青色事業専従者給与など、節税につながる多くの特典が用意されています。

令和2年分の所得税申告から青色申告特別控除の適用要件が一部変更されます。また、青色申告をしていることが利用の要件となる制度を紹介するため、これまでの記載内容を修正しました。見落としがないか改めてご確認ください。

青色申告者には数多くの特典があります。
代表的な特典をあげてみました。利用が可能かどうかを確認してみましょう。


その他、青色申告者にだけ認められる主な制度などは次のとおりです。

個人でお仕事をするなら青色申告をはじめましょう。

青色申告特別控除:最高65万円の控除

令和元年分までの青色申告特別控除の控除額は、65万円または10万円の2種類です。

※令和元(2019)年分の所得税の確定申告期間は、令和2(2020)年2月17日(月)から3月16日(月)までです。
※令和2(2020)年分からの青色申告特別控除額についてはこの項目の下部分をご確認ください。

65万円控除

正規の簿記の原則(一般的には「複式簿記」をいいます)により記帳している事業者が、その帳簿にもとづいて、損益計算書とともに貸借対照表を作成し、これを確定申告書に添付して、申告期限内に提出すれば最高で65万円まで所得(不動産所得、事業所得)から控除できます。
※不動産所得については、事業的規模の不動産貸付けによる所得です。

10万円控除

65万円控除の適用者以外の方は、10万円を限度に所得(不動産所得、事業所得、山林所得)から控除できます。


白色申告者

白色申告者の場合は適用はありません。



令和2年分からの青色申告特別控除の控除額は、65万円、55万円、10万円の3種類です。

◆これまでの青色申告特別控除65万円の控除額は、55万円になります。
◆これまでの青色申告特別控除65万円の適用要件に加えて、e-tax(イータックス)による電子申告または電子帳簿保存をおこなう場合に、新たな青色申告特別控除65万円が適用されます。

青色申告特別控除と適用要件
控除額 摘要要件
55万円 ❶事業所得または事業的規模の不動産所得のある人
❷正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により取引を記録
❸貸借対照表、損益計算書、その他の計算明細書を確定申告書に添付して
❹申告期限内に提出すること
65万円 上の❶~❹の要件に加え、次の❺と❻のいずれかひとつを実施
❺e-tax(イータックス)で確定申告書・青色申告決算書などを提出
❻電子帳簿保存法で仕訳帳および総勘定元帳を備付け・保存
10万円 上の55万円または65万円の控除額の適用を受けない青色申告者

青色事業専従者給与:事業主と同居する家族従業員への給与

事業主と生計を一にする配偶者や15歳以上の親族が、その事業にもっぱら従事していれば、その勤労の対価として支払われる給与の全額を必要経費にすることができます。この給与を青色事業専従者給与といいます。この給与の支払いをおこなうためには、事前に税務署へ青色事業専従者給与に関する届出書を提出します。

なお、事業的規模でない不動産貸付けのみをおこなう人は、青色事業専従者給与の適用を受けることはできません。

白色申告者

白色申告者の場合は、事業専従者控除として、配偶者は最高86万円、15歳以上の親族は最高50万円を限度に控除が受けられます。

純損失の繰越控除・繰戻還付

青色申告者なら所得が純損失(赤字)になってしまっても、赤字を翌年に繰り越し、翌年以降3年間の黒字の所得から控除することができます。また、赤字の年の前年が青色申告をしていて黒字であった場合には、赤字を前年分に繰戻して、所得税額の還付を受けることができます。

白色申告者

白色申告者の場合には、変動所得や被災事業用資産の損失に限って繰越控除が認められています。

棚卸資産の評価方法(低価法):売値が大きく変動する事業では必須です!

青色申告者は、事前に税務署へ届け出ることによって、棚卸資産の評価方法に低価法を適用することができます。
低価法は、12月末日の棚卸資産の時価と取得原価を比較して、低い方を用いて棚卸資産の金額を決める方法です。売却以前に在庫の値下がりによる損失を計上することができます。
なお、事前に税務署へ棚卸資産の評価方法を届け出ない場合には、最終仕入原価法を適用します。

白色申告者

白色申告者は低価法の適用はありません。

少額減価償却資産の特例:減価償却の仕組みを覚えてかしこく申告しましょう

一定の要件を満たす青色申告者が2006(平成18)年4月1日から2020(令和2)年3月31日までの間に、減価償却資産(一括償却資産の適用を受けるものを除く)の取得等をして、業務に使用した場合には、その年に取得価額の全額を必要経費(年の合計額は300万円を限度)とすることができます。この適用を受ける場合には、決算書の減価償却費の計算の「適用」欄に「措法28の2」と記載します。

白色申告者

白色申告者には認められていません。少額減価償却資産の特例など、租税特別措置法で定められている青色申告者の特典のほとんどは、白色申告者に適用することはできません。

貸倒引当金

青色申告者は、売掛金や貸付金などが回収できなくなった場合の損失にそなえて、年末の売掛金や貸付金の残高のうち、一定の割合で引当金として必要経費に計上することができます。

白色申告者

白色申告者は、会社更生や再生手続の申し立てなどの特定の事由に該当する債権に限り、一定の割合で貸倒引当金を設定することができます。

個人版事業承継税制の適用

青色申告をおこなう事業者であれば、個人版事業承継税制を適用することができます。

個人版事業承継税制とは、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)による青色申告をおこなう者の事業の継続を前提に、その後継者が先代事業者の貸借対照表に記載された事業用の土地、建物、減価償却資産(特定事業用資産)を、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの10年間に贈与または相続もしくは遺贈により取得したときに、一定の要件のもと贈与税または相続税の納税が猶予される制度です。また、事業を継続していた後継者が死亡などした場合には猶予されていた税が免除されます。



白色申告者

白色申告者は、個人版事業承継税制の適用が認められていません。

農業収入保険制度への加入要件

青色申告をしている農業者なら、農業経営に関わる様々なリスクを対象とした農業収入保険制度に加入することができます。

収入保険制度とは、青色申告を行っている農業者(個人・法人)が、自ら生産した農産物の販売収入全体を対象として、当年の収入が基準収入の9割(5年以上の青色申告実績がある場合)を下回った場合に、下回った額の9割(支払率)を補塡する制度です。 加入にあたっては、申請時に青色申告の実績が1年分以上必要になります。

白色申告者

白色申告者は、農業収入保険制度の加入は認められていません。

確定申告書提出時の個人番号(マイナンバー)確認書類の添付省略

過去に開業届出書などの提出の際にマイナンバーを提供し、すでに番号法上の本人確認がおこなわれている青色申告者は、書面による所得税等の申告書(還付など一部手続きを除く)の提出の際に、番号確認書類の提示または添付を省略することができます。

番号確認書類を省略できても本人確認書類の提示または写しの添付が必要ですが、書面で所得税の確定申告書を提出する場合、通常、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書などの第三者作成書類(下枠内記載⑨)の添付などがありますので、身元確認のためだけに運転免許証などの書類(下枠内記載①~⑧)の写しを用意する必要はありません。

白色申告者

白色申告者の場合は、番号確認書類の提示または添付の省略を認められていません。

書面での税務関係書類の提出とマイナンバーの記載・確認書類の添付について

税務署に書面で提出する書類に個人番号(マイナンバー)を記載した際には、正しいマイナンバーであることの確認(番号確認)およびその方がマイナンバーの正しい持ち主であることの確認(身元確認)の2つがおこなわれるため、確認書類の提示または写しの添付が必要です。

●マイナンバーカードをお持ちの方は、マイナンバーカードの提示または写しの添付だけで番号確認と身元確認が可能です。
●マイナンバーカードをお持ちでない方は、番号確認と身元確認について、それぞれひとつずつ次の確認書類の提示または写しの添付が必要です。

番号確認書類(ご本人のマイナンバーを確認できる書類)は次のいずれかひとつ。
①マイナンバーカードの通知カード
②住民票の写しまたは住民票記載事項証明書(マイナンバーの記載があるもの)など

身元確認書類(マイナンバーの持ち主であることを確認できる書類)は次のいずれかひとつ。
③税務署から送付される確定申告の「お知らせハガキ」
④運転免許証
⑤公的医療保険の被保険者証
⑥パスポート
⑦在留カードなど
⑧身体障害者手帳
⑨生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書・小規模企業共済掛金払込証明書・社会保険料(国民年金保険料)控除証明書などの第三者作成書類