1.青色事業主勤労所得控除の早期実現
わが国には、個人事業主の勤労性所得を認める税制上のしくみはない。一方、個人企業と経営実態が類似する同族法人企業の社長には、役員報酬が支払われ、給与所得控除が認められている。両者に共通する勤労性所得に対する課税のあり方に不公平が生じている。このため個人事業主と社長とでは、所得税・住民税の税負担に大きな格差がある。
また伝統的な自営業者が減る一方、給与所得者に類似した雇用的自営業者やフリーランスが増えるなど働き方が多様化している。働き方の違いによって不利益が生じない公平な税制を構築すべきである。
真面目な記帳と納税を実践する青色申告をおこなう個人事業主に、勤労所得控除の適用を所得税法上に認めることで、課税のあり方を公平にすることができる。青色事業主勤労所得控除の早期実現を要望する。
2.事業的規模にいたらない不動産所得者の青色申告特別控除10万円を20万円へ引き上げ
正規の簿記の原則により記帳し、イータックス等により申告する事業所得者や事業的規模の不動産所得者は、青色申告特別控除55万円・65万円が適用されている。
昨今、都市部では不動産所得者の増加が著しい。こうした不動産所得者の中には、事業的規模にいたらないため、正規の簿記により記帳しイータックス等で申告しても、半世紀以上にわたり据え置かれている青色申告特別控除10万円の適用が受けられるのみである。
事業所得者・不動産所得者全体の記帳水準の向上をはかるため、事業的規模にいたらない不動産所得者が正規の簿記の原則により記帳し、イータックス等により申告した場合には、青色申告特別控除10万円を20万円に引き上げることを要望する。
3.個人事業主に係る純損失の繰越期間の延長
青色申告をおこなう法人の欠損金額の繰越期間は、平成28年度の税制改正により10年間とされている。一方、青色申告をおこなう個人事業主の純損失の繰越期間は3年間に据え置かれ、個人と法人との間に制度格差・不公平が生じている。
新型コロナウイルス感染症の影響により、自助努力をしてもなお赤字経営に苦しんでいる個人事業主が多数いる。個人企業の事業継続のためにも、令和5年分以降に生じた各年分の純損失の金額を10年間(現行3年間)にわたり繰越控除することを要望する。