10・11月号

令和8年度 税制改正要望意見[2025年10・11月号]

全国青色申告会総連合は、令和8年度税制改正要望意見を取りまとめました。最重点要望事項を掲載します。要望実現に向けて、税制改正運動に取り組みます。会員の皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。

最重点要望事項

Ⅰ 個人所得課税

1.給与所得控除の最低保障額に対応した青色申告特別控除の引き上げ
 平成30年度税制改正において給与所得控除の最低保障額が65万円から55万円に引き下げられたことにあわせて、青色申告特別控除65万円も55万円に引き下げられた。青色申告特別控除の引き下げは、青色申告会が青色事業主の勤労性を認めた税制の実現を要望してきた過程で、青色申告特別控除が創設され、給与所得控除の最低保障額と青色申告特別控除額で平衡をとってきたことに起因する。
 令和7年度税制改正において、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、青色申告特別控除額は55万円に据え置かれた。平成30年度税制改正の経緯から、現行の青色申告特別控除55万円を65万円に引き上げることを強く要望する。なお、現行の青色申告特別控除55万円は、イータックスによる申告等により、控除額が10万円加算され65万円となる。給与所得控除の最低保障額に対応して青色申告特別控除額55万円が65万円に引き上げられる場合は、イータックスによる申告等をすれば、当然に控除額の10万円加算は維持されることとする。
2.青色事業主勤労所得控除制度の早期創設
 個人事業主の業種、業態に大きな変化が続いている。小売・卸売業といった伝統的な自営業者が減少する一方、給与所得者に類似した雇用的自営業者やフリーランスの増加など働き方の多様化が進んでいる。
 給与所得者に適用される給与所得控除には、勤務費用の概算控除と他の所得との負担調整の特別控除の2つの性格があり、後者の性格は担税力の弱い勤労性所得に対する配慮と考えられている。同控除の前身は勤労控除でありその性格が引き継がれている。勤労性所得に対する配慮は、給与所得控除のその2分の1を差し引いた残りに相当する。給与所得者に認められる特定支出控除は、給与所得者の実額経費が給与所得控除の2分の1を超過した場合に適用されるからである。
 一方、個人事業主の所得に勤労性所得が含まれていることは周知の事実であるが、その所得の担税力は、給与所得者と同様に弱いにも関わらず、勤労性所得を認める税制上の仕組はない。働き方の違いによって勤労性所得の配慮に大きな不利益が生じている。また、同族法人企業や一人法人の社長は、個人事業主と実態が変わらない。役員報酬の支払いによる節税目的の不自然な法人成は、個人企業との間の税負担の格差をもたらしている。資本金500万円以下の法人企業の74・5%(令和5年「会社標本調査」国税庁)は、役員報酬を支払うこと等によって法人税の納税額がゼロ(欠損法人)であるといわれている。こうした状況下にあって、所得間の課税上のバランスを確保し、公平な税制の構築は喫緊の課題である。
 誠実な記帳と納税を実践し青色申告をおこなう個人事業主の所得には、最低保障額65万円を起点に、同額を差し引いた残額の2分の1をあわせて控除する青色事業主勤労所得控除制度の早期創設を強く要望する。
3.事業的規模にいたらない不動産所得者の青色申告特別控除10万円を20万円へ引き上げ
 正規の簿記の原則(一般には複式簿記)により記帳している事業所得者や事業的規模の不動産所得者に適用される青色申告特別控除には、現在、55万円(書面による申告)と65万円(イータックスによる申告等)の2種類がある。
 一方、事業的規模にいたらない不動産所得者には、同じ正規の簿記の原則により記帳し申告をしても、青色申告特別控除10万円の適用だけである。この10万円の控除額は、昭和47年に創設された青色申告控除10万円以来、半世紀以上にわたり据え置かれている。この間、企業物価指数は約2.2倍に上昇している。
 事業所得者と不動産所得者全体の記帳水準の向上をはかるために、事業的規模にいたらない不動産所得者であっても、正規の簿記の原則により記帳し、イータックスによる申告等の場合には、青色申告特別控除を現行の10万円から20万円に引き上げることを強く要望する。
4.個人事業主に係る純損失の繰越期間の延長
 青色申告をおこなう法人の欠損金額の繰越期間は、平成28年度の税制改正により10年間とされている。一方、青色申告をおこなう個人事業主の純損失の繰越期間は3年間に据え置かれ、個人と法人との間に制度格差・不公平が生じている。
 諸物価の高騰や人手不足など、自助努力をしてもなお赤字経営に苦しんでいる個人事業主が多数いる。個人企業の事業継続のためにも、令和7年分以降に生じた各年分の純損失の金額を10年間(現行3年間)にわたり繰越控除することを要望する。

Ⅱ 消費課税

1.インボイス制度の負担軽減措置の恒久化
 インボイス制度の導入により、インボイス発行事業者である小規模事業者の納税事務負担は大きく増加している。
 その年の2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下のインボイス発行事業者が選択できる売上に係る消費税額の2割を納税額とする負担軽減措置(2割特例)が令和8年分の申告まで、インボイスが発行されない事業者からの仕入れに係る仕入税額控除を80%まで認める経過措置が、令和8年9月30日までの取引に適用される。また、一定の帳簿のみを保存することで仕入税額控除ができる1万円未満の少額取引は、令和11年9月30日までの取引に適用される。
 これらの小規模事業者に配慮した納税負担や事務負担軽減措置の恒久化を要望する。
2.軽減税率制度の見直し
 軽減税率制度は対象品目の取扱いを見直すことを要望するとともに、生活に直結する必需品にかかる軽減税率については、制度の設立の趣旨をふまえ、低税率に据え置くよう十分に配慮することを要望する。

Ⅲ 資産課税

1.個人事業主の事業承継税制の円滑な運用
 個人版事業承継税制を活用するために必須とされる特例承継計画の提出期限が令和8年3月31日までとされているために、同日をもって同税制の実質的な適用は終了する。一方、法人版事業承継税制には、特例措置と一般措置のふたつの制度がある。特例措置は、個人版と同時期に終了することになるが、適用期限のない一般措置は残る。
 個人事業主が事業を継続発展させるため、個人版事業承継税制を恒久化するとともに、個人事業主が活用しやすいように、青色申告決算書の貸借対照表に記載された事業上の現預金・売掛金・棚卸資産などの流動資産を特定事業用資産に含め、個人事業主むけに事務手続をはじめ諸要件を緩和するなど、抜本的に制度の見直しをすすめ、個人事業者をさらに支援することを要望する。
[カテゴリ:全青色,税制改正運動,要望意見][2025年10・11月号 4-6ページ掲載記事]
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