8・9月号

令和7年 年金制度改正法が成立[2025年8・9月号]

年金制度改正法が令和7年6月13日に成立しました。個人事業者にかかわる部分を中心にまとめました。

令和6年財政検証 

国民年金・厚生年金などの公的年金は、少なくとも5年ごとに財政状況が検証され、必要な制度改正がおこなわれます。直近の令和6年財政検証では、女性や高齢者の労働参加の進展や好調な積立金運用を反映し、財政状況は改善したことが確認されました。また、制度改正の検討に資するため、被用者保険(厚生年金、協会けんぽなどの健康保険)の加入者拡大などをおこなった場合の試算を実施しました。

令和7年年金制度改正法

社会経済の変化を踏まえ、働き方や男女の差などに中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化などを踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充などで高齢期における生活の安定が図られるよう、次の制度改正がおこなわれます。

被用者保険の適用拡大など

(1) 短時間労働者の加入要件の見直し
パートやアルバイトなどの短時間労働者(学生を除く)は、これまで次の3つの要件を満たすときに、被用者保険に加入する必要がありました。
㋐週の所定労働時間が20時間以上
㋑月収8.8万円(年収106万円)以上
㋒勤務先の従業員数が50人超
今回の改正で、㋑の賃金要件が法の公布から3年以内に撤廃、㋒の企業規模の要件が段階的に撤廃され(図表1参照)、㋐の労働時間だけが要件になります。なお、この改正であらたに加入することになった短時間労働者の負担を軽減するため、国が事業所を通じて支援する特例が3年間に限って設けられます(労使合意で任意に被用者保険を適用する場合でも支援対象)。

(2) 個人事業所の適用対象の拡大
常時5人以上を雇用する個人事業所では、これまで法律で定める17業種に限って、被用者保険に加入する必要がありました。今回の改正で、加入しなくてもよいこととされていた業種はなくなり、令和11年10月から原則としてすべての業種で加入することになります(図表2参照)。ただし、令和11年10月時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外とする猶予措置が設けられます。なお、5人未満を雇用する個人事業所は現行どおり、適用対象外です。

在職老齢年金制度の見直し

年金を受給しながら働く高齢者の賃金と老齢厚生年金の合計が月額50万円(令和6年度価格)を超えると年金受給額が減額される在職老齢年金制度について、令和8年4月から基準額が62万円(令和6年度価格)に引き上げられます。

遺族厚生年金の見直し

厚生年金の加入者や、厚生年金の受給資格のある方が亡くなったあとに遺族が受給する遺族厚生年金について、遺族が男女のいずれであるかで異なる支給要件や給付内容を男女共通とします(男性は令和10年4月から実施。女性は令和10年4月から20年かけて段階的に実施)。また、令和10年4月からは、遺族である父あるいは母が遺族基礎年金を受け取れない場合などであっても、生計を同じくする子どもが受け取れるようになります。

厚生年金の標準報酬月額上限の引き上げ

厚生年金などの保険料や年金額の計算につかう賃金の上限を月額65万円から75万円に段階的に引き上げます。これにより、保険料負担は引き上げられますが、年金額もそれに応じて引き上げられます。

私的年金制度の見直し

働き方にかかわらず老後の資産形成を継続できるよう、法の公布から3年以内に政令で定める日からiDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする者の加入可能年齢の上限が70歳未満に引き上げられます。

将来の基礎年金の給付水準の底上げ

令和11年に予定する次回財政検証で基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合などには、厚生年金の積立金と追加的な国庫負担を活用して基礎年金の給付水準を底上げするなど、必要な対応を検討することになりました。
※詳しくは厚生労働省ホームページ「年金制度改正法が成立しました」を参照してください。
[カテゴリ:国民年金][2025年8・9月号 10-11ページ掲載記事]
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