2・3月号

令和3年度 税制改正大綱[2021年2・3月号]

令和2年12月10日、与党は令和3年度税制改正大綱を発表しました。青色申告会の最重点要望項目のうち、個人版事業承継税制の対象となる車両の範囲拡大が実現しました。また、青色事業主勤労所得控除の早期実現は検討事項に取り上げられました。個人事業者にかかわるおもな内容の概要を掲載します。

個人事業者の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、対象となる特定事業用資産の範囲に、先代(被相続人または贈与者)が事業に使っていた乗用自動車で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているもの(取得価額500万円以下の部分に限る)が加えられます。

検討事項(抜粋・原文まま)

小規模企業税制
小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。
※ 文中の「青色申告の普及」は、全青色の要請により加筆されました。

税制改正内容(抜粋・要旨)

資産課税
住宅取得等資金の贈与税非課税措置の延長など
直系尊属(父母・祖父母など)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、新築等の契約締結が令和2年4月1日から令和3年3月31日までに適用された非課税限度額が、令和3年4月1日から同年12月31日までの契約についても適用されます。また、贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が1,000万円以下の場合は、床面積の要件が緩和され、40㎡以上(現行:50㎡以上)になります。

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の延長など
直系尊属(父母・祖父母など)から教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、一部見直しをおこなったうえ、適用期限が令和5年3月31日まで2年延長されます。

土地の固定資産税の負担調整措置
宅地および農地の負担調整措置について、令和3年度から令和5年度まで継続されます。そのうえで、令和3年度に限り、宅地等(商業地等は負担水準が60%未満に限る、商業地等以外は同じく100%未満に限る)および農地(負担水準が100%未満に限る)について、令和3年度の課税標準額は令和2年度の課税標準額と同額とされます。また、令和2年度に条例減額制度の適用を受けた土地については、令和3年度も同様の措置が講じられます。

住宅・土地税制
住宅ローン控除の見直し
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、消費税率10%が適用された住宅の取得等に適用される控除期間13年(通常:10年)の特例が、一定期限までに契約を結んで令和4年12月31日までに居住した場合にも適用されます。また、床面積の要件が40㎡以上(現行:50㎡以上)に緩和されます。ただし、40㎡以上50㎡未満の物件は、合計所得金額が1,000万円を超える年については控除が適用されません。

消費課税
エコカー減税の延長
燃費基準の達成度に応じた自動車重量税の免税等の特例措置については、燃費性能要件の見直しをおこなったうえ、適用期限が令和5年3月31日まで2年延長されます。また、自動車税と軽自動車税の環境性能割、種別割についても、燃費性能要件や適用期限などの見直しがおこなわれます。

その他の国税
セルフメディケーション税制の延長
特定一般用医薬品などを購入した場合のセルフメディケーション税制について、適用対象となる医薬品の見直しがおこなわれたうえ、適用期限が5年延長されます。

子育て支援事業の助成金の非課税化
国や地方自治体が子育て支援事業として費用の助成をおこなう場合は、所得税・個人住民税が課税されないことになります。

納税環境の整備税務関係書類の押印不要化
押印が必要な税務関係書類(担保提供や物納手続きなどの書類の一部を除く)については、令和3年4月1日以後に提出するものから押印が不要になります。
※ 大綱が閣議決定され、国税庁は施行前においても、運用上、押印がなくても求めないとしました。

電子帳簿保存制度の見直し
国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の適用には事前に税務署長の承認が必要でしたが、令和4年1月1日からこの承認制度が廃止されます。また、領収書等の国税関係書類のスキャナ保存制度についても、承認制度が廃止されます。
青色申告特別控除65万円の適用要件として電子帳簿保存をおこなう場合は、今までどおり訂正等の履歴が残ること、帳簿間で相互関連性があること、検索機能があることなどの条件を満たす必要があります。

[カテゴリ:税制改正大綱,税制改正,要望意見,全青色][2021年2・3月号 4-5ページ掲載記事]
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